ラジオ・ラジカセミニ博物館
Victor RC-838の修理
2006年12月3日〜12月16日作成
2020年4月18日更新
★修理専門業者ではないので、修理依頼はお受けしていません★
修理依頼品の修理の模様です。 故障症状としてスピーカーのエッジが、破けているので修理しようとして分解したところ、 ラジオのチューニングの糸も外れて元に戻せなくなり、修理して欲しいとの依頼でした。 修理依頼の場合は自分用の保守用パーツは使用しないのですが、今回は特別に自分の保守用のパーツを使用しています。 修理未経験者や初級者向けの細かい工程の説明はしていません、 基礎知識があり修理経験豊富な方が修理してください。 万一修理を失敗しても、自己責任でお願いいたします。 |
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届いたときはこんな状態でバラバラでした。 まず基板を元の位置に戻して、破損の状況と欠品がないかの確認と 動作チェックをしました。 何度か修理したことがあっても、さすがにこの状態はもう一台を参考に しないと復元出来ません。 スピーカーのエッジは修理できない状態でしたので、保守用のスピーカーと 交換します。 ビクターのネジは用途に合わせて、色分けされています。 無闇にネジを外してばらばらにすると、思わぬ所を破損して壊してしまいます。 なれない方は決して分解しないように。 分解には順番がありますので、構造をよく解析してから分解しましょう。 |
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中のフレームを取り出して組み立てました。 この機種は、このように取り出してから基板やカセットメカを外します。 ひとまず欠品は無いようですが、破損箇所がありました。 チューニングダイヤルの糸が外れたのは、ローラ(プーリ)の軸がひとつ折れて 外れたのが原因でした。 無理にアンプ基板を外したため、引っ掛けて折ってしまったようです。 もう一度ケースに収めて動作チェックをしました。 ラジオはチューニング出来ないので確認は後回し、カセットはベルトが伸びて いるようで早送りでオートストップが働きません。 ひとまず簡単なチェックで次に進みます。 |
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右側がチューニングツマミの軸です。 左側のローラ(プーリ)の軸が折れていました。 ダイヤル糸が折り返しの所なので、接着剤で大丈夫か不安でした。 何か良い方法が無いか考えましたが、 ひとまず瞬間接着剤で軸を固定してみましょう。 幸い軸が太かったので、うまく接着され強度も問題ないようです。 ダイヤル糸を掛け直しました。 問題なく動き、大丈夫そうです。 すごいぞ、瞬間接着剤。 |
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まず、保守用からスピーカーを取り出し交換しました。 修理依頼品のスピーカーを左に取り付けて元に戻しました。 保守用も、なるべく元の状態に戻します。 左のスピーカーの色が違うのが気づきましたか。 黒い色が焼けてかなり白くなっていたのを黒く染め直しました。 まずは、エッジの破けたスピーカーで色を塗るテストをしたところ、 うまくいきましたので修理品のスピーカーに色を塗ります。 交換したスピーカーとは色あせ具合が違うので、 塗装しないとバランスが取れないので挑戦しました。 |
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外した状態で写真を取り忘れましたので、ネット越しですみません。 薄い灰色のような状態です。 |
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テストで塗ったスピーカーです。 濃い色の墨汁を使用しました。 筆でうまくぬれます。 重ね塗りをしても、濃い墨汁を使用したためか気になりません。 うまくいきました。 |
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交換したスピーカーです。 センターキャップのフチに何故か色がついています。 金色の縁取り、気になるかな。 色は奇麗に塗れています。 |
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修理依頼品のスピーカーです。 センターキャップのフチは銀色です。 これが普通です。 こちらも色はうまく塗れました。 |
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修理依頼品です。 右側が交換したスピーカーです。 センターキャップ以外は違いが分かりません。 音も大丈夫のようです。 |
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次はカセットメカの修理です。 裏の基板の配線も外してから、ネジを外して取り出します。 |
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カセットメカの裏側です。 シールド板とフライホイールの裏板を外してゴムベルトを交換します。 |
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ゴムベルトを外します。 フライホイールを外すときは、ソレノイド(プランジャー)を外してから 引き抜きますが、自信の無い方はやらないほうが良いです。 構造をよく把握した上で取り外してください。 |
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フライホイールも掃除するため取り出しました。 直径6.8cmあります。 今のカセットデッキでも、これだけ大きな物を使用しているのは ほとんど無いでしょう。 ワウ・フラッター0.07%の安定した回転の秘密です。 |
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左側がRC-838で使用しているゴムベルトで、3mm幅です。 その右側の幅の広いのが、多く使われている4mm幅のベルトです。 さらにその右側が、4mm幅を3mm幅にカットした物です。 |
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メカに取り付けてあるスイッチも取り外して、接点を磨きます。 ポーズボタンの裏側にもスイッチがあります。 ベルトの通る所とメカの清掃をします。 古いグリスもふき取り、新しいグリスを塗ります。 |
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ゴムベルトはこのように掛けます。 黒いプーリは、4mm幅のベルトを使用するとベルトが外れますので、 3mm幅のベルトに加工して使用します。 |
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キャプスタンの軸受けが外れました。 ダイキャストのフレームに真鍮製の軸受けがはめ込んであります。 この構造のメカは真鍮製の軸受がよく外れます。 キャプスタン軸を通した状態で、外側のダイキャストのフレームと真鍮製の 軸受けの間に瞬間接着剤をつけて固定します。 失敗しても大丈夫、瞬間接着剤はがしですぐ取れますので安心。 軸受の修理は、Victor RC-838の修理 Part2へ |
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ピンチローラも固くなっていましたので交換します。 金属アームを外すときは、バネの掛け方を良く覚えておいてください。 取り付けるときにバネの掛け方を間違えると、 ヘッドブロックが下がらなくなったりします。 |
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標準サイズで、金属軸です。 左が外したピンチローラ、右が新品。 軸穴は、2.5mmです。 |
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カセットメカの右側についているシリンダーは、 ソフトイジェクトのメカです。 カセットドアが開き方が遅くなったり開かなくなるのは、 このシリンダー内のグリスが硬くなったためです。 |
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シリンダーを抜いてグリスをふき取り、 新しいグリスを少量塗ります。 グリスを塗りすぎると、空気抜きの穴がふさがって動きにくくなります。 |
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写真が後になってしまいましたが、ボリュームの洗浄の仕方です。 まず、接点洗浄剤で汚れを落とします。 スライドボリュームは特に、埃など汚れが入っているので接点復活剤を 先に掛けずに接点洗浄剤で汚れを浮かして綿棒でふき取ります。 写真の太い綿棒が標準サイズですが、これだとボリュームの中を拭けません。 細いほうが、ベビー用の綿棒です。 汚れがつかなくなるまで接点洗浄剤の吹きかけと、拭取りを繰り返します。 汚れが落ちると同時に、グリスも落ちてしまうので動きが悪くなります。 その後に接点復活剤を吹きかけます。 接点復活剤を掛けると動きが良くなりますが、 それでも動きの悪いときは接点グリスを綿棒で金属のフレームの内側に少量塗ります。 これでも接触が悪いときは分解して磨き、再び組み立てて戻します。 それでもだめなら交換です。 |
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チューナー部の基板です。 撮影用に取り出しました。 |
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チューナー部の裏側です。 |
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フレームを中に入れる前にテープのスピード調整とアジマス調整をしておきます。 調整の必要は無かったようで、合っていました。 フレームを中に入れて、組み立ててチューナーの調整です。 今回は調整の必要は無いようです。 カセットの再生レベルも録音も問題ありません。 スピーカー以外は、かなりコンディションの良いラジカセです。 |
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裏ブタを閉じて再び動作チェック。 裏ブタを閉じて完成のはずが、レベルメーターが動かない。 原因は、裏ブタのシールドがめくれていて基板に接触していた為でした。 接着剤で貼り付けて、裏ブタを閉じて動作チェック。 |
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RC-838の特徴である、さわやかで奇麗な音です。 無事、修理完了。 |