SONY エレクトレット コンデンサー ステレオ マイクロホン
ECM-989の修理


2020年3月21日作成開始 2020年3月22日更新

初めて購入したワンポイントステレオマイクで、長い間使用したものです。
現在は使用していませんが、とても愛着があります。
故障してしまいましたので、原因を調べることにしました。
分解手順と修理の備忘録として記録しておきます。

★修理専門業者ではないので、修理依頼はお受けしていません★
 

エレクトレット コンデンサー ステレオ マイクロホン ECM-989
1983年10月30日購入
 

ソニー初のMS(Mid Side)方式のワンポイント・ステレオマイクで、指向主軸角度を0度から150度まで連続可変できます。
マイクユニット部とコントロール部が分離して、延長ケーブルを接続すると遠隔操作ができます。

マイクカプセル部とコントロール部に分離可能で、間にケーブルを接続して100メートル位まで延長して
リモートコントロールができます。
別売りの延長ケーブルEC-10CS-5P(10m)を接続。

標準プラグをキャノンコネクターと同タイプのノイトリックのコネクターに変更し、ステレオミニプラグのケーブルも製作しました。
TC-2500に接続しての生録から、WM-D6C、SV-MD11、NT-1などでも使用しました。

カタログの画像をクリックすると大きくなります。


修理履歴

昭和60年(1985)7日月15日、
キャノンプラグネジ外れによる破損。
マイクユニット部とコントロール部のキャノンコネクタが外れた
のだと思います。

壊れたことがあったような気がします。
コントロール部のキャノンコネクタが外れたのかもしれません。
分解しないとネジが締められませんので修理に出したと思います。
 

昭和60年(1985)11日月19日、角度調整ツマミのガリ発生。
修理結果表は技術料のみなので、部品交換は
していないと思います。
マイク角度0度からステレオにするとサーというノイズが増えるようで、
S/Nが良くないと思い修理に出した記憶があります。
仕様ということで改善はされませんでした。
ワンポイントステレオマイクは、屋外での使用するのに便利でしたので
長いこと使用していました。
アルカリ乾電池で連続30時間という使用時間が短いのが欠点ですが、
マイク角度が調整できるだけでなく、マイクユニット部も分離できるので、
別売りのリモートコントロールユニットMRU-90は購入しませんでした。

1990年6月24日に購入した、テクニクスのポータブルDAT
SV-MD11に接続するために、不平衡型の標準プラグを
平衡型のキャノンコネクターに交換しました。
取扱説明書の6ページにコネクターとプラグの説明があります。

2018年に所有マイクの動作テストをしてみると、
ECM-989の電源スイッチを入れても、
バッテリーチェックランプが点灯しなくなりました。
電源を入れると、LEDのバッテリーチェックランプが瞬時光って
電池使用可能か知らせてくれます。
デッキにつないで音が出るかチェックしたところ、
電源のオンオフでプツと音は両チャンネルから聞こえます。
残念ながらマイクの収録音は聞こえませんでした。
動作品のECM-989を入手し、故障個所を調べる。

2019年11月にやっと動作品のECM-989を入手できました。
取扱説明書はありませんが美品です。
若干の接触不良はありますが動作品です。

マイクユニット部とコントロール部を入れ替えて
動作テストをしました。
マイクユニット部ではなく、コントロール部の故障です。

取扱説明書のブロックダイヤグラムを見て故障個所を予想します。
電源オン時にブツと両チャンネルから聞こえますので、
マトリックス回路は大丈夫かもしれません。
電源関係の故障と予想できます。
ネットで検索してもECM-989の修理記事は見つかりません。
サービスマニュアルは海外用はあるようです。
カタログを見ると内部構造がなんとなくわかります。
分解方法を自分で調べてみることにします。
分解手順(仮組後に再分解した写真を使用)

マイクユニット部とコントロール部を分離します。

グリップを取り外します。

ストッパーで一旦止まりますが抜き取ります。

樹脂製のストッパーがあります。

ストッパーを取り外します。

電源/音質切り換えスイッチレバーを取り外します。

ツマミの2か所に溝があります。
指向主軸角度セレクターのツマミを取り外します。

ラッチボタンの化粧板を外します。
精密ドライバーなどでこじ開けました。

化粧板の下にネジがあります。
 

各部ツマミ類を取り外してからラッチボタンのネジも外し、
ラッチボタンも取り外します。

裏側の2か所のネジを外します。

ネジリングの取り付けネジを取り外してスライドさせます。

ラッチボタンのネジを外してラッチボタンを取り外します。
カバーをスライドさせます。

ラッチボタンと音質/切り換えスイッチのカバーを取り外します。
 

取り外した部品。

昭和60年にゆるんだキャノンコネクターの取り付けネジ。

回路基板側カバーの固定ネジを外します。

回路基板側カバーの固定ネジを外します。

回路基板側カバーの固定ネジと
指向主軸角度セレクターの固定ネジを外します。

回路基板側のカバーの固定ねじを外します。
 

回路基板側カバーを取り外します。
仮組後の写真為、入力トランスの樹脂カバーを止めている
テープは布製ガムテープを使用しています。

マトリックス回路。
 
 

マトリックス回路。

DC-DCコンバータとバッテリーチェッカー回路。

シールドケースはDC-DCコンバータ。
 

入力トランスの樹脂カバーを固定している本来のテープです。
このように、接着剤も劣化してはがれていました。

入力トランスと樹脂カバー。

モード切り換えスイッチのレバーを取り外します。

取り外したモード切換スイッチのレバー。

電池ボックスの固定ネジを外します。

電源/音質切り換えスイッチの固定ネジを外します。

入力トランスの樹脂カバーを外します。

入力トランスをどかして指向主軸角度セレクターの
固定ネジを外します。
仮組後の写真の為、プラスの配線が仮組のつなぎ方です。
 

仮組前の基板です。
電池ボックスからのプラスの配線は、基板の穴を通っています。
電池ボックスへの取り付け作業が難しかったので、
プラスの配線を基板から外しました。

仮組後の写真です。
本来は、プラスの配線は矢印の部分を通って繋がっていました。
プラスの配線は取り外すと、基板の穴を通すのが難しいです。
隙間から通しました。銅箔パターンが両面にある基板です。

回路基板固定ネジを外します。


 

回路基板固定ネジを外します。

回路基板固定ネジを外します。

回路基板固定ネジを外します。

回路基板と電池ボックスを切り離しました。

電池ボックスマイナス側とモード切り換えスイッチ。

マトリックス回路パターン側。

入力トランスとDC-DCコンバータのパターン側。
 
 

モード切り換えスイッチ。
アルカリ電池の液漏れが少しついています。
磨いておきます。 

電池ボックスマイナス側は、アルカリ電池の液漏れで腐食して
います。
腐食した部分を磨くため、マイナス側のスプリングとネジを
外しましたが、ネジが短いために組み立てが大変困難でした。

マイナスの黒い配線も腐食のため取れてしまいました。
分解して磨いた後に少し長めの新しい線を取り付けました。
 
 
配線確認用写真(仮組前の写真)
回路図や配線図などがないため、
いろいろな角度から撮影しました。
それでも見えていないところがあります。
今回は接写のできるデジカメを使用しています。
部品を見て故障個所の見当をつける。

基板を見るとステレオなので左右対称に部品があります。
左右同時に不良となっているので、左右に関係している
部品が故障と推測できます。

DC-DCコンバータ周辺で一番怪しいのは、
ひとつだけある電解コンデンサーです。
半田を吸い取り、取り外して調べてみます。

テスターで容量を計ると測定できませんでした。
電解コンデンサーの不良のようです。
手持ちの電解コンデンサーで22μFがありませんでした。
33μFが1個だけありましたので、テストとして取り付けてみました。
取り外した電池ボックスの配線をつなげてから、
電池をセットして動作テストをしてみます。
電源スイッチを入れると、バッテリーチェックランプが
一瞬点灯する様になりました。
電解コンデンサーの容量が違うので、DC-DCコンバータの
動作にどのような影響があるかわかりません。
仮組をして動作テストをしてみます。

入力トランスの樹脂カバーを固定するテープの種類によって
付きがよくありません。
布製ガムテープが一番良かったです。

組み立てて動作テストをしました。
ユニットを入れ替えたり比較してみましたが、
コントロール部の出力レベルがとても低いです。

1回目の修理は、ここまで調べました。
DC-DCコンバータの出力電圧が正常であれば、出力レベルが低いのは別の原因であると考えられます。
 
2回目の修理開始 2020年3月22日

アルカリ電池の液漏れが原因らしく、
抵抗のリード線が腐食して破損していました。

腐食して折れた抵抗のリード線。
磨いてもハンダは付きにくいです。

手持ちの抵抗は1/4Wしかありません。

折れたほうのリード線を取り除きます。

折れた抵抗のもう片方のリード線を残して切り離します。

残したリード線をつないでハンダ付けします。

仮組をして動作テストと比較をします。

感度は元通りに直ったようです。
配線確認用写真(仮組後の写真)
まとめ

DC-DCコンバータの出力のリード線。

DC-DCコンバータの出力電圧は9.54Vありました。

トランジスター規格表見ると、
マトリックス回路に使用されているトランジスターは、
用途が高周波増幅と低雑音増幅と書いてあります。
 
今回の修理で、無事直りました。
DC-DCコンバータの出力に繋がっていた電解コンデンサーの不良と、
抵抗の腐食による破損でした。
去年もポータブルラジオの基板が、
液漏れによる腐食で壊れて、基板を交換しました。
アルカリ電池の液漏れした電解液は、
長い間に腐食して故障の原因となります


2019年にし購入したものと比較をしてみました。
以前から気になっていたS/Nの悪さがはっきりしました。
個体差によるものか、トランジスターの雑音レベルの違いのようです。
マトリックス回路に使用されているトランジスターの2SC1362も
オーディオ用の低雑音トランジスターに交換すると
S/Nが良くなると思います。

経年劣化でトランジスターもノイズが増えることがあります。
同じトランジスターがなくても互換品に交換することができます。
互換表によると、2SC1843、2SC1815、2SC331A、2SC1344、
2SC1740Sなどです。

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